放射線治療

7月12日から25回放射線の治療


紹介状を持って訪れたK大学病院は 自宅から車で 約30分

交通の便が悪く 電車バスだと 3度の乗り継ぎで 1時間半は かかってしまう。 

これから 真夏に向けて 元気な時でさえ 辛い時期なのに 今の私には往復3時間もの通院時間は 耐えられそうにもなく やむなくタクシーで通院する事に決める。

考えても仕方のないことだけど もっと楽しいことに お金を使いたいと 心から思う。

初診手続きから 診察まで2時間 やっと診察室へ呼ばれ 緊張しながら先生の前に座ると 先生は まず私に 自分の病気を どのように聞いているかと質問された。

私は 乳ガンだと知っているので そのようにお答えし 健康診断でガンを発見したことに始まって現在までの経過を細かくお話しした。

「よく知っているね」と 妙なところでお褒めの言葉をいただいてしまった。

先生からは コバルトを月曜から金曜まで週に5回 それを5週間続けて25回受けることと 予定された一定期間受けないと効果があがらないので途中で休まないように等とお話を伺う。

診察後 シュミレーションと呼ばれる 放射線の照射位置を決める為の部位の計測と 位置決めの為に乳房へ印を付ける。胸に赤い線がいくつも引かれているのを見ると 何となく痛々しい。

すべての検査を終え やっとコバルト室から呼ばれた時には もう1時を過ぎていた。

いったいどんな事が起きるのだろうと 不安と緊張で 体を固くしたまま 上着を脱いで治療台に横になる。両手は頭の上に置かれた握り棒をしっかり持って 体を動かさないように小さく息をする。

先生が正確に慎重に位置決めをし 「動かないで下さい」 の声を残し部屋から出て行かれた。

「ウィーン」小さな機械音が聞こえて 放射線が照射され始める。痛みも熱もないが まだ傷の痛みのせいで 両手を頭上に上げている姿勢が少し辛い。数分のはずの時間がとても長く感じられて 時間の感覚がつかめない 
突然「ゴォー」と機械が 元の位置に戻り始め 放射線照射の終わったことを知った。

部屋に戻ってこられた先生に手を借りて 治療台から起きあがりながら 大きなため息をついた。これで1回目が終わった あと24回・・・
大きなため息を気にして下さったのか 先生が 「25回が終わる頃には腕も上がりやすくなっていますよ。明日からはもっと短時間で済みますからね」と 声をかけてくださった。
治療室を後に 会計を済ませ 自宅に帰り着いたのは3時近くだった。

こうして 月曜日から金曜日まで午前中は放射線治療に 通い始めた。一日目は緊張していたせいで気づかなかったが コバルト治療室にはBGMが ながれていたし 先生方や看護婦さん達も とても親切に 丁寧に接してくださる。

放射線科の診察室の前の廊下に 長椅子がおかれ ぽつんぽつんと座る女性の姿が見える。私と同じように ガンの治療の為にこの病院を 訪れていらっしゃるのだろうか?そしてどの方も 心の中に 苦しみや悲しみや辛さを どっぷりと抱え込んでいらっしゃるのだろうか? 

治療を続けていると 毎日 顔を 合わせる方々もいらっしゃって軽い会釈をして 通り過ぎる。私は新米なので 悲しすぎてどの方にも まだご挨拶さえできないけれど どうか一日も 早いご快復をと 心の中で 祈りながら 毎日この廊下を後にする。 

放射線7日目 白血球が3000に減少した為 アンサーと呼ばれる注射を受ける。これは白血球の減少を抑制する作用がある皮下注射だが かなり痛みがあり注射部位が赤く腫れた   

放射線11日目 白血球3500に増加 手のひら足の裏にかゆみがでるが原因は不明

放射線14日目 P病院にて 2度目の ゾラデック注射を受ける。時々首筋から背中にかけて カーっと熱くなる感じがして 辛い。薬による副作用の更年期症状だと 思う。冷房の効いた部屋にいても 突然のぼせてしまう。なんだか体温調節がうまくいかないようで よく子供達に 「今暑い?寒い?」と聞いて 不思議がられた。

放射線15日目 あまり体のかゆみが強いのでアンサー注射を中止してセファランチンと言う飲み薬に変更していただく

放射線18日目 皮膚が赤くなりヒリヒリとした痛みが強くなってきた。深夜ひどい胃の痛みに襲われる。 自己判断で薬を飲めないので 足のつぼを必死でおさえて 痛みに耐える

放射線19日目 病院の廊下の長椅子は 今日も治療を待つ人で 溢れている 静かに時を待つ人 あの人もこの人も 過酷な病と 今 戦っていらっしゃるのだと思うと 思わず駆け寄って どうか お元気でと声をかけたくなってしまう・・

やっと少し 他の方とお話ができるようになった。自分一人だけが病気と闘っているのじゃないと ここへ来て 教わった。

たくさんの先輩方がいて 私の後にも 次々とたくさんの方が治療を受けている。長い待ち時間に 誰かが私の 話を聞いて 慰めてくださり 次は 私が誰かを励まして・・穏やかに時間が過ぎていく。
 あと少し 最後まで無事に受けられますように

放射線21日目 いよいよ5週目 放射線を受けている部分 左胸から脇の下にかけて 熱をもって やけどのようになって痛い。 薄く皮がめくれて 赤黒く 皮膚の弾力性がなくなって 萎縮しているようだ。今日は久しぶりの雨 昨日よりいくらかしのぎやすい。 昨日は37度あったそうで 殺人的な暑さがつづいている。病院から帰っても だるくて何もできずに ごろごろしている。夏休みなのに 何処へも行けず子供達に申し訳ない 

放射線22日目 皮膚の赤みと痛みがひどい。 シャワーの後は特に真っ赤になって熟れすぎたトマトみたいで 衣類が触れると痛い。みんなが寝静まった深夜 上半身裸で過ごす。   

放射線24日目 P病院受診 主治医から使用する予定の 抗ガン剤の説明を受け 今後の治療方針について話し合う。抗ガン剤も副作用として白血球の減少が みられるので 開始時に白血球が3000以上ないと 受けられないそうだ。 次回2週間後の検査結果にて治療方針を決定することになった。

放射線25日目 とうとう最終日 いつものように診察 治療を受けた。先生に丁重にお礼を 申し上げて病院を後にした。まだ一ヶ月ごとの診察には 行かなければならないが 8月16日 長くて暑い 私の夏が終わった。

残りの夏は 子供達との夏休みを 楽しみたい そして 元気を少し蓄えて 

抗ガン剤治療に のぞもう。  

 


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〜いのち輝いて 乳がんと共に〜