退院ホルモン療法

6月30日負けない


再手術後 傷は 順調に回復していたが のども痛いし(全身麻酔下の人工呼吸器を付けていた為)もちろん傷も痛いし(脇下のリンパ節を取った傷7センチと 腫瘍部分胸側6センチ ) 頭痛もするし(麻酔の後遺症?) 胃も痛いし 背中も痛い 腕も痛いし(手術のために皮膚の知覚が低下し しびれや違和感がかなり有り) 肩から手首にかけてむくんでブタの足みたいだし(リンパ節を取ったために体液やリンパ液の流れが極端に悪くなっている)・・・まだ愚痴りたりないくらい まいっていた。

抜糸まで 肩関節の運動は禁止され腋をあげないようにと注意を受けたが 痛くて 本当に 元のように動くのか 不安だった。
毎日 ガーゼ交換と採血くらいしかする事がないので、体力を落とさないように 病棟の廊下をくるくると 歩いた。 
予定外の手術も受けた為に 肉体的にはかなり辛かったし 貧血もあった。
しかし 退院すればその日から 主婦業が待っている。
 今までと変わらずに 子供達を学校に送りだし、掃除洗濯買い物 色々な趣味・・を こなし 暮らしていきたい その為にも じっとベットで休んでいるわけにはいかなかった。
胸から左腋にかけては常時痛みがあるが、手術の傷さえ治れば 痛みも軽くなるはずであった。
祖母がよく言っていた”ひにちぐすり”時間が傷を癒してくれる、今 まさにそうなのだと実感していた。

そして 手術後7日目に腋につけていたドレーンを抜去。7日〜9日目にかけて3日に分けて傷の抜糸。
予定通り 6月30日 次女の誕生日に 退院することが できた。
やっと 退院したのもつかのま 2日後の7月2日には 外科を受診
傷は順調に回復しつつあるが 腕はまだ肩よりほんの少し上に上げるのがせいいっぱいで 握力はあるが 腕力はかなり落ちているように感じる。先生と今後の治療方針について 相談する。
乳房温存術を 受けると 温存した乳房にガンの再発する危険性があるので 放射線照射を行う。
しかし放射線照射をしても 完全に根絶できるわけではなく 臨床報告では5年で3〜7%程度の人が 乳房内再発を起こすとされている。
私は 放射線を受けることを決めて 先生からK大学病院の放射線科宛に 紹介状を書いていただいた。
しかし 放射線を受けるためには 腕が真上にあげられないと いけないと聞いて焦った。
左腕をかばって つい右腕ばかり使っているせいか 左腕はまだまっすぐ前に上げるだけで精一杯。放射線を始めるまで あと10日あるので今日から自宅にて リハビリ特訓開始。
放射線照射後の術後補助療法として 内分泌療法(ホルモン療法)と化学療法(抗ガン剤投与)があり 内分泌療法とは 乳ガンの発育を促すホルモン(エストロゲン)の働きを抑えて 乳ガンの発育を阻害する方法で 化学療法とは ガン細胞に衝撃を与えて死滅させるいわゆる抗ガン剤を投与する方法である。
私のガン細胞の場合 ホルモンと反応する受容体(エストロゲン受容体 ER)が陽性でホルモン依存性がある為 ないもの(ER陰性)に比べて 内分泌療法が有効ということで ゾラデックスという薬を 4週ごとに 前腹部に皮下注射 抗エストロゲン剤を服用 投与期間は2年の予定と 伺う。
ここまでは 先生のお話を 聞き漏らすまいと必死になって 耳を澄ましていた。
治療法も 内容についても 少しは理解できた。
でも なんだか 耳慣れない言葉や想像もつかない状況に 不安でたまらない。自分の不安を少しでも解消する為に 思いつく限り 先生に 質問する。

まず「内分泌療法の副作用は?」
答え「エストロゲンを抑える為に 生理が止まり 更年期症状がでることが ある」
「その不快症状を解消することはできるのか?」
答え「エストロゲンを抑えることによっておこる症状なので 根本的に解消することはできないが いずれ体の方が 慣れてくるので長期にわたって副作用に苦しむ事はない」 
抗ガン剤の副作用は?」
答え「吐き気食欲不振 白血球の減少等が 考えられるが 体質や症状によって かなり違いがあるので 始めてみないと わからない」
「副作用の対策は?」
答え「抗ガン剤の点滴を受ける際に 吐き気止めの点滴も同時に受け 吐き気止めの薬も調合されるし 白血球の減少については 血液検査で監視し 一定量以下になる場合は 薬によって増やしたり 投与スケジュールを調整しながら様子をみる」
「抗ガン剤の投与期間は?」
答え「1週目2週目に点滴と薬で服用その後2週間は薬を休む この4週間を1クールとして6クール受ける」
聞きたいだけ 聞いて もうこの場では 何も思いつかなくなった。
私が 静かになったのを機会に 先生は ゾラデックスと いうホルモン注射の準備をなさっている。
でも 先生が手に持っていらっしゃる 今まで見たこともない 腹部皮下注射用の冷たく光る注射器を 見たとたんに たまらなく不安になった。
正直 怖かった。

放射線 ホルモン治療・・いったい私の体は どうなってしまうのだろう こんな治療に耐えられるのだろうか?恐怖で体が 震えそうだった。
涙が溢れて来るのを 止めることができなかった。ガンの告知を受けた時でさえ 先生の前では 泣かなかったのに・・・
私は 泣きながら それでも 先生に 「私は今までと同じように 子供達の世話をしながら 暮らしていきたい。それなのに病気を治す為とはいえ 治療の 副作用で 動けなくなってしまうのは いやだ。」と 訴えた。
乳房にメスを入れた上に注射をしてまで 女性ホルモンを止め生理を止めなければいけない事に 対する 女としての哀しみに耐えきれなかった。

私の泣き言を じっと聞いてくださった先生は「副作用には 大変個人差があります。正直言って 受けてみなければ わからないと言えます。しかし不安な気持ちでいらっしゃるなら今日は やめておきますか?」と 聞いて下さった。
結局 私は 注射を受けた。できる限りの治療を 受けたいという気持ちは変わっていないし そうすることが 子供達と一日でも長く 穏やかな暮らしを続けることに繋がると信じているから・・・
今日から2年間4週間に一度こうして おなかに皮下注射を受けることになるのだ。
辛い副作用のないことを 願う

次は 放射線治療・・・私は 負けない 


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〜いのち輝いて 乳がんと共に〜